看護師の年収はなぜ都道府県で142万円も差があるのか

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はじめに

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の都道府県別平均年収は 最高の東京都が約568.9万円、最低の鹿児島県が約426.9万円 で、その差は 約142万円 にもなります。

同じ「正看護師」の資格を持ち、同じ業務を担当しているにもかかわらず、なぜこれほど大きな差が生まれるのでしょうか。本記事では、この格差の構造的な原因を整理します。

1. 需要側: 病院数と病床数の集中

医療従事者の年収は、最終的には「働き先の経営体力」で決まります。

東京都・大阪府・愛知県などの大都市圏には:

  • 大学病院・特定機能病院 が集中しており、高度医療に対応するための看護師配置基準が高い
  • 民間の大規模病院グループ が複数存在し、人材獲得競争が激しい
  • 患者数自体が多く、診療報酬収入の総額が大きい

結果として、看護師1人あたりに支払える人件費の上限が高くなります。

2. 供給側: 看護師の絶対数と流動性

地方では「養成校の卒業生がそのまま地元に残る」傾向が強く、人材市場が硬直しています。一方、首都圏は:

  • 全国の養成校から人材が流入する
  • 転職市場が活発で、転職による給与上昇のインセンティブが働く
  • 高給を提示しないと有能な人材が他施設に流れてしまう

この 「人が流動する市場」と「流動しない市場」 の差が、賃金水準の差に直結します。

3. 物価・生活コストとの関係

「東京は物価が高いから給料も高い」という説明は、半分正しく、半分は不正確です。

地域看護師平均年収消費者物価指数(全国=100)
東京都約569万円約105
鹿児島県約427万円約97

物価差は概ね10%程度ですが、年収差は 約33%。つまり、物価で説明できるのは差額の3分の1程度です。残りの3分の2は、上記1・2の構造要因によるものです。

結論: 「東京勤務 = 実質的な手取りが多い」と言えます。家賃などの固定費を考慮しても、地方より東京の方が 可処分所得は多くなる傾向 にあります。

4. 診療報酬制度の地域加算

国の制度として、医療機関の所在地に応じて診療報酬が一部上乗せされる「地域加算」があります。

東京23区などの「1級地」では、地方の「7級地」より診療報酬収入が高くなる仕組みです。この上乗せ分の一部が、人件費に還元される形で看護師の給与差を生んでいます。

まとめ: 個人として何ができるか

都道府県格差は個人の努力では覆せない構造的なものです。ただし、以下の選択肢は検討する価値があります:

  • 同一県内での施設変更: 大学病院→一般病院→診療所→介護施設の順で年収が下がる傾向がある。逆方向への転職で給与アップが見込める
  • 都市圏への転職: 引っ越しコストや家族の事情をクリアできるなら、年収アップ幅は大きい
  • 専門資格の取得: 認定看護師・専門看護師は、地域差に関わらず月20,000〜30,000円程度の資格手当が付くことが多い

ご自身の現在の年収が同条件の平均と比べてどの位置にあるかは、診断ツールで確認できます。


出典: 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(2025年3月公表) / e-Stat